アスレティックトレーナー が日常生活やスポーツにおける「健康」と「安全」について書いています

脳振盪からの競技復帰に役立つBCTTテストとは?

脳振盪は脳が衝撃によって揺さぶられた事によって起きる頭部外傷のひとつです。

頭痛、めまい、吐き気、睡眠障害など様々な症状がありますが、その多くが数日で改善するケースがほとんどです。

しかし
症状が無くなったからといって焦って運動を再開してしまうと、
再発したり症状が完全に無くならずに長引いてしまう可能性もあります。

そのため脳振盪からのスポーツ復帰は慎重に行わなければなりません。

今回は脳振盪からの復帰過程で用いるランニングマシンを使ったテストについてご紹介します。

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症状がなかなか消えない場合がある

脳振盪を起こした後はしっかり休息をとる必要がありますが、
競技復帰までずっと安静にしている訳ではありません。

24〜48時間の休息の後は、症状が悪化しない範囲で身体を動かすべきだと言われています。

競技復帰までは段階的復帰(GRTP)プログラムといって、全6段階の過程で少しづつ運動強度を上げていく事が推奨されています。

しかし休息をしっかりとっているにも関わらず、頭痛や吐き気などの症状が一定期間以上消失しない事があります。

これを「脳振盪後症候群:Post Concusion Syndrome(PCS)」と言い、数ヶ月続いてしまう事もあります。

日常生活では無症状でも、身体を動かした際に症状が出てしまう場合もあるため注意が必要です。

このPCSからの回復にも運動が効果的であると言われています。

昨年私がサポートしているチームでも、1人PCSと考えられる選手が出てしまいました。
長期間に渡り症状が改善しなかったため、チームドクターを通じて東邦大学の中山先生にご相談させていただき、その後段階的に無事復帰する事が出来ました。

その時に使ったのが「Buffalo Concussion Treadmill Test(BCTT)」というテストでした。

Buffalo Concussion Treadmill Test (BCTT)

傾斜を設定する事ができるトレッドミル(ランニングマシン)を使って、心拍数等を計りながら行うテストです。

必要なもの

  • 0〜12 or 15%まで傾斜を設定できるトレッドミル
  • ウェラブルタイプの心拍センサー(POLAR社製など)
  • 主観的運動強度(RPE)スケール:ボルグスケール
  • 症状の視覚的評価スケール(VASスケール)
  • 水分やタオルなど

テスト方法

  1. 3.6mile/h(約6km/h)でスタート
  2. 2分後に1%傾斜をつけ、その後1分毎に1%傾斜を上げる
  3. 2分毎に心拍数・ボルグスケール・脳震盪の症状(VAS)を確認する
  4. 傾斜が12or15%まで上がった後はスピードを1分毎に0.4mile(0.6km)あげる

テスト終了の判断

  • ボルグスケールが限界(19~20)に到達した
  • 脳震盪の症状が悪化した(VAS:≧3)
  • 症状が出ずに限界に達した場合はテストクリア
  • 症状が悪化した場合はその時の心拍数が現状の限界値

有酸素運動の実施

テストで症状が悪化した際の心拍数を基準に、その数値の80%程度を維持できる強度で有酸素運動を20分間実施します。

この時に行う運動はトレッドミルではなくても、バイクを使ってもOKです。

これを1週間で5回程度行います。

2週間おきにBCTTを行いながら負荷を上げていくのですが、それが困難な場合もあります。

そういった場合は脳振盪の症状が悪化しない範囲で1週間毎に設定心拍数を5〜10拍ほど上げていきます。

定期的にBCTTを行い、症状が出ずに疲労困憊まで行う事が出来た段階でクリアとなります。

クリア後は段階的に競技へ復帰していくことになります。

まとめ

脳振盪から順調に復帰できる事が望ましいですが、脳振盪後症候群になってしまう選手は決して珍しくありません。

そのような選手もBCTTのような評価を使うことで、安全に運動を開始する手助けになります。(脳神経外科の受診は必須です)

また、復帰のための有酸素トレーニングの強度を確認するテストとしても使うことが出来ます。どの程度の負荷まで安全に有酸素運動が可能なのかを判断する一つの指標にできるので、大変便利です。

トレッドミルが無いという場合は、バイクで行うBuffalo Concussion Bike Test というものもありますので調べてみてください。

ー参考文献ー
・McCrory P, at al.Consensus statement on concussion in sport-the 5th international conference on concussion
 sport held in Berlin,October 2016. Br J Sports Med 2017; doi:10.1136/bjsports-2017-097699
・Leddy JJ, Willer B. Use of graded exercise testing in concussion and return-to-activity management. Current
 Sports Medicine Reports.2013;

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